行動を指示してね
今日は健康食品販売店の指導日でした。
20代の男性営業マン2名が一向に成長しないというので、昨年から人材育成支援のお手伝いに入っています。
社員10名に満たない小さい会社さんですが、家族経営が母体なので、何かと課題も多いのです。
専務が問題
この会社さんは、先代の社長が立ち上げた会社で、先代社長の奥様が専務、息子が社長という構成です。
奥様といっても80代のおばあちゃんなんですが、シャキシャキとしたやり手の方で、お付き合いの長い自分のお客さんが来社するときだけ出社してきて、来客対応をします。
そして退社するときに、1~2件、自分のお客さんを周って帰る、というパターンです。
だけど、見ていると、この専務が、結構、現場をかき回すんですよね。
持ち前の営業力で会社の基盤をつくった人なので、社員の至らないところが目に付きやすいし、今も自分の顧客をたくさん持っていて、発言力と存在感をキープしたいのはわかるんですが、こういう方はその場その場の直観力が優れている分だけ、周囲からは統一性がまったくないように見えてしまい、社員は振り回され気味です。
本当はとても卓越したコミュニケーション力がある人だと思うんですけど、そういう人ってものすごく臨機応変にケースバイケースで動くので、指導される側の社員にとっては、彼女の言動を統合して捉えることができず、気分で動いているように見えちゃうんですよね。
専務の先を見据えた行動
今日もその流れで、注文書を見ながら、棚から商品の準備をしていましたが、注文書にない商品もいくつか取り出しているので、それを見た20代の営業マンが、「あ、それ、注文に入ってない商品ですよ?」って言ったんです。
たぶん、ご高齢でたまにうっかりミスもあるので、間違えたと思ったんでしょうね。ちなみに彼は専務の孫です。
そしたら、そのおばあちゃん専務がこう答えました。
「なーに言ってんの!注文だけ持って行ったら営業にならないでしょ?」
横で来ている私は、メチャメチャ確かに!と思います。
私も営業経験があるので、それはものすごくよくわかる。
ちょっとした話題が思わぬセールストークになって、お客さんが「それって今あるの?」と、注文以外の商品に関心を示すことがあり、そこでそれを持っているか?いないか?が分かれ目のときってあるんですよね。
こういうときは一発で決めないと、同じチャンスが二度とめぐって来ない場合があるし、たとえ最終的に断られても、お客さんが一度はその商品を手に持って見て触っているということは、今後、必然性が出てきたら思い出してもらえる可能性がとても高まりますよね。
なので専務はそのあとも、商品棚を「うーん・・・」と眺めながら、今から訪ねるお客さんが好みそうな商品や、自分が今日勧めようと思う商品などを、選んでいました。
でもそれじゃやっぱり若い社員は育たないと思う
でも、ここで私が「あー、残念だな」と強く感じたのは、専務の受け答えが適切な指導になっていないことなんです。
この会社の営業マンは20代の若者2名だけで、しかもそのうちの一人は専務の孫ですが、残念ながら二人とも、そんなに優秀な人材というわけではありません。
「なーに言ってんの!注文だけ持って行ったら営業にならないでしょ?」
という受け答えは、叱責に聞こえるので若者たちはたぶん、「あー、またいつものお小言が始まった」と、いなしてしまうと思うのですが、そもそもその前に、この二人は察しが悪いので、そういわれてもどうするべきか、全くピンと来ないと思うんですよね。だから同じことを繰り返して、いつも怒られるんです。
この機会を指導に活かすなら、理由を説明したうえで、
「お客さんが違う商品を欲しがるときがあるから、注文以外の商品も必ずいくつか持って行きなさいね」
または、「持って行くものですよ」でもいいかな。
要するに指示です。
そうそう、この会社さんって、社長も専務も、本当に「指示」がないんです。批判はあっても指示がない。どうすればいいか?が明示されないので、凡人営業マンの二人はいつも迷いがあってウロウロしちゃうんですよね。
今の若い人たちは、全般的に「察し」の能力に欠けるので、あれはダメ、これもダメというだけじゃ、決して伸びません。逆に、ダメと言われる法則性がわからず、自分で考えることをあきらめてしまい、上の立場の人の言う事だけその場その場で従えばいい、という考え方に至り勝ちです。
そうならないためにも、「どうすればいいか?」をきちんと明示すべきだと思います。