やる気が見られない社員に「どうなりたいの?」と尋ねてはいけない

 

仕事先の知人からの相談

先日、お仕事先の女性担当者さんから相談がありました。
昨年から30代の女性を事務職として採用したが、
やる気がなくて困っている、というものでした。

 

その女性担当者は社長の娘さんで、
困っている事務職の女性とは同世代。
事務職の女性はシングルマザーのため、
10時~16時のパートで雇用しているが、
言われたことしかやらず、
しかも最近は、嫌々仕事しているのが露骨で、
社内の雰囲気が非常に悪く、扱いにも困る。

 

うち(総勢7名)のような零細企業は、
人員に余裕がなく、ひとりひとりが自分で考えて、
主体的にどんどん動かないと回っていかないため、
今は戦力に全くなっていないし、重荷である。
この頃は、自分もイラッと来て、
つい、キツイ物言いをしてしまうことがある、
というものでした。

 

彼女曰く、一度きちんと面談をして、
「〇〇さんは、どうなりたいの?」
と、優しく尋ねてみようかと考え始めたが、
ぷらたなすさん、それってどう思います?

 

というのが、直接の問いでした。

 

「どうなりたいの」と聞いても無駄

私の考えは、
無駄だからやめた方がいい
です。

 

そこできちんと自分の意思を言えるような人なら、
逆に今のような事態にはなっていないだろうし、
そもそも、普通に考えても、
経営者の娘に面と向かってそう聞かれても、
本音ですぐに語れる人っていますか?いませんよね。

 

100歩譲ってそういう能力がある人だったとしても、
話を聞く限りでは、
よいことも悪いことも忌憚なく話し合える関係には、
決してなっていないと思えるので、
警戒心や猜疑心を煽るだけで、
思った結果にはならないと思う。

 

さらに話を聞き進めると、彼女の会社では、
優秀な人になら有効だけど、
そうでない人にはあまり役に立たない教育指導を、
行っていることがわかりました。

 

優秀な人には有効でもそうでない人には無益な指導
というのは、今、どこの会社でも普通に行われている、
「自分で考えさせて、自分で判断させる」ような指導です。
小さい会社ほどありがちですが、
入社した最初のうちから裁量権が大きく、
かつ、その人独自の動き方に関しても寛容な姿勢です。
管理的なマネージメントの逆パターン?

 

でも、そのアプローチで育つのはあくまでも優秀な人だけ、
と思ってください。

 

今の若者は並み以下の人だと想像以上に自分で動けない

私は昨年、ある三流大学の非常勤講師を務めましたが、
そうでない大学との学生さんの質のあまりの違いに、
なるほどねぇ~と思いました。

 

同じ大学生でも、三流大学の学生さんは、
「はい、二人一組になってー!」と呼び掛けても、
誰も動こうとしません。
一部の学生さんが、困ったように辺りを見回しますが、
動こうとしない人のボリュームが多いので、
結局、行動にはつながりません。

 

かつ、三流大学の学生さんになると、
自己価値が低い人が多いので、
とにかく目立つことにメチャメチャ拒否感があり、
他人と違う行動は、極端にしたがらないので、
集団の中でリーダー的な人材も自然発生しません。
なんとなく、どんより、ぼんやり、という雰囲気なんです。

 

私だって今の時代に生まれて、
その大学の学生だったら同じようになると思うので、
学生さん達に罪はありませんが、
この環境で過ごしてきた人たちが、
社会に出て、自主的に自由に動けるか?と言えば、
答えは断然NO!だと思います。

 

相談してきた彼女の会社の女性が、
高卒か大卒かは聞きませんでしたが、学歴はどうあれ、
今は、並み以上の若者と、並み以下の若者の差がすごくて、
並み以上の若者は、やりたいことも目標もあって、
自分のキャリアイメージが明確ですが、
並み以下の若者は、
「何かになりたい」という気持ちがそもそもないし、
職業や業務に対する意識も著しく希薄だったりします。
(広がる親世代の収入格差に起因しているのでは?と思う事も)

 

営業職なのに営業的な動きができない事例

私の支援先のある会社さんは、
営業職で採用した若者2名の動きが悪いのが悩みですが、
この2名は、高確率の見込み客と思われる人を前にしても、
営業的なアプローチを一切しないので、経営者が、
「あの二人は、売り上げを上げる気持ちが本当にあるのか?」
と、首をひねるわけです。

 

普通は、営業職として採用されれば、
その辺りは言われなくても、十分わかることですが、
残念ながら、並み以下の若者を採用してしまった会社は、
●営業とは何か?●営業の目標は何か?
●見込み客とは何か?●見込み客には何をすべきか?
というところから、レクチャー的に教えて行かないと、
理解しないし、身にもつかないという現状です。

 

そして一番いいのは、「こういう人材になって欲しい」
と、こちからか目標を具体的に提示して、
それを分解して、〇〇ができること、××ができること、
△△のときには□□をすること・・・
というように、どのように行動すればいいのかを、
体系立てて明示することです。

 

並み以下社員は自由度が高いと伸びない

自分の経験上いえることは、
並み以上の人は、
言わなくても当たり前にできるし、
感覚的にやっていることですが、
並み以下の人は、
説明されないとダメですね。

 

ですが、経営者さんというのは、
基本的に優秀な人達ですから、
「一度教えられないとわからないし理解できない」
「周囲を見てノウハウを獲得していく力がない」
ということがわからないんですよね。

 

だから、自分たちが成長するきっかけになって、
そう言われるとやりやすいし、うれしかった
「任せるから好きにやってみろ」とか、
「あなたのやり方でかまわないから」とか、
「なんでもいいから提案して」みたいなアプローチは、
彼らには、茫然とした困惑以外の何物でもなく、
そういう指導ほど、たぶん彼らのやる気を下げます。

 

事務職の場合も同じで、
「期限を守る」「なんでもスピーディに行う」
「不明点は先方に確認する」「金銭に関しては即上司に相談」
みたいな、言わなくても普通はわかるようなことでも、
説明しないとわからない人がたくさんいますし、
そこを、わかるだろうという漠然としたイメージを基盤に、
物事を進めると、相手の人は逆に何もできなくなっちゃうし、
何をどうしたらいいのかわからなくなって、
結果的に言われたことだけするようになってしまうんですよね。

 

彼女が聞きました。
「前職が大手だったということもありますか?」

 

あー!それはあり得ます。
そんな雰囲気の人なら、
たぶん派遣さんだったかもしれないけど、
もし派遣さんなら、大手の場合は、
スタッフの自己判断を嫌うし制止されているので、
私の別な仕事先のスタッフも、
上場会社の派遣から20名前後の会社に転職して、
どう動いていいのか全くわからなかった、
と述懐しています。

 

だから、結論としては、
彼女の会社は社員教育の初動を誤ったともいえますが、
これ、いま、すごく多いんですよ。
今の若い人(30代含む)の並み以下の人は、
想像を絶するぐらい、仕事に対しては、
著しく何も考えていないし、
自分でも考えることができない人が多いので、
まずは基本となるやり方をがっちり固めて、
それを一から教えて、徹底的に守らせる、
そこから始めないと、逆に成長しないと思います。

 

こころや気持ちを求めないほうがうまくいく

 

じゃ、面談はしないほうがいいんですか?

 

してもいいけど、私の経験では、
そこで「頑張ります」と言っても、
翌週に退職願を書いてくる人がとても多いです。
だから、面談は、経営者側のほうに、
最悪辞めてもいい、という踏ん切りと、
覚悟がついた時のほうがいいです。

 

でも、せめて、もう少し会話をして、
意思疎通ができるようになりたいんですが。

 

その場合は、雑談や世間話で心を通わせよう、
なんて思わないこと。
雑談や世間話で心が通うぐらいなら、
もうとっくに意思疎通がはかれているはずです。

 

採用して1年経っても、意思疎通がうまくいかないのは、
相手にその気がないか、コミュニケーション力が低いか、
のどちらかですから、雑談や世間話は無駄と思ってください。

 

その場合は、
どうしても言葉を交わさなくてはいけない業務を選んで、
それを担当されるといいでしょう。

 

なんでもいいんです。例えば・・・
今後、当社ではTwitterで発信していくことになったから、
という名目でTwitterを毎日少しずつ教えてもいいし、
読み合わせの校正作業などで、間違いを指摘してもらうとか、
要するに感情がなくても、言葉を交わせるシーンをつくって、
それを題材に、たくさん業務上の会話をして欲しいということ。

 

そうすると、逆に中身がしゃっきりしてくるんですよ。

 

私達は、思いや気持ちを重視しがちですが、
思いや気持ちなんて、並み以下の人達には、
最初はなくてもいいんです。
もう淡々と、やるべきことを説明して、
相手がそれに何も考えずに従っているうちに、
逆に「思考力」があとからついてくるんですよね。
だから、いつまでもそこに固執しないこと。

 

「やることさえやってくれればいい」ぐらいの気持ちで、
すべて(いわゆる)事務的に接した方がいいことも多いし、
意欲を持って仕事の喜びを感じて働いてほしい、というのは、
確かに理想ではあるけど、並み以下社員にとっては、
もしかしたら、いまだに経験したことがない感覚かもしれず、
「何を言っているかわからない」かもしれません。
(なので経営者の方の自己満足に思えてしまうことも)

 

「やる気が見られない」というのは
できる人ができない人を見て感じる感情だと思いますが、
本人は、そういう雰囲気を醸し出しているとは、
思っていない可能性もおおいにあります。
または、どういう行動をすれば、
「やる気があると思われるのか?」ということさえ、
察知できない方も、並み以下の方には多いんですよ。

 

だから、「やる気が見られない」けど、
それが全く「やる気がない」のかどうかは、
わかりませんが、少なくてもその「やる気」は、
優秀な人が想像する「やる気」とは異質であることだけは、
確かだと思います。

 

やる気が一向に見えずに困っている方は、
ぜひ、一度、試してみください。
かくいう私は、「並み以下社員」が実は大好きで(笑)
そっち系のオファーが来るとうれしくなって、
こうやってついブログに書きたくなっちゃうんですよね。

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